入社してまだ数週間、数か月なのに「この会社は合わない」と感じていませんか。試用期間中でも辞められるのか、すぐに辞めたら次の転職で不利にならないかと、一人で悩んでいる方も多いはずです。
私はWEB系事業の責任者として、300名以上の採用面接に携わってきました。採用する側の立場から見ると、短い期間で辞めたこと自体よりも、その理由と次の会社選びをどう説明するかが見られているということです。
この記事では、試用期間中に退職するときのルールと、次の転職でマイナスを最小限にする辞め方、面接での説明の仕方までを解説します。読み終えるころには、損をしない辞め方と、次の一歩の踏み出し方がわかります。
試用期間の退職が次の転職に響くかは辞め方で決まる
試用期間中でも、正社員であれば退職を申し出てから2週間で辞められます。試用期間だからといって、退職できない決まりはありません。
ただし、短い期間で辞めたことは履歴書に残り、次の面接でも必ず理由を聞かれます。短期離職をなかったことにはできませんが、マイナスを最小限にすることはできます。そのために押さえておきたいのは、次の3つです。
| そろえること | 内容 |
|---|---|
| 辞める理由 | 合わなかった理由を、不満ではなく事実として説明できるようにしておく |
| 辞め方 | ルールに沿って早めに伝え、引き継ぎを済ませて円満に辞める |
| 次の面接での説明 | 辞めた理由と、次の会社選びの基準をセットで話せるようにしておく |
この3つがそろっていれば、試用期間での退職は「判断が早かった人」として受け止めてもらえる可能性があります。反対に、勢いで辞めて理由も説明できないと、「次もすぐ辞めるのでは」と見られやすくなります。
試用期間中でも退職できるルール
辞め方を考える前に、退職のルールを押さえておきましょう。試用期間中も労働契約はすでに結ばれているため、退職のルールは本採用後と変わりません。
- 期間の定めのない雇用(一般的な正社員)は、退職の意思を伝えてから2週間で辞められる(民法第627条)
- 就業規則に「1か月前までに申し出る」などの定めがある場合は、できる限りそれに合わせて伝えるのが安全
- 会社が合意した場合や、聞いていた労働条件と違う場合などは、2週間を待たずに辞められることもある
- 契約社員など期間の定めのある雇用は、契約期間の途中で辞めるには原則として「やむを得ない事由」が必要
即日で辞められるケースや、有給休暇を使って出社せずに退職日を迎える方法は、こちらで詳しく解説しています。

給料は支払われ研修費を請求されることもない
試用期間中に辞めても、働いた分の給料は支払われます。また、「研修にお金がかかったから返してほしい」と言われても、労働基準法第16条は、労働契約の途中で辞めた場合に違約金や損害賠償額をあらかじめ決めておくことを禁止しています。
万が一、給料の未払いや高額な請求があった場合は、会社の所在地を管轄する労働基準監督署や、各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーに相談しましょう。
- 正社員なら、申し出から2週間で退職できる
- 就業規則に申し出の期限があれば、できるだけ合わせる
- 契約社員は、契約途中の退職に原則「やむを得ない事由」が必要
採用する側は試用期間での退職をこう見ている
採用する側が短期離職の応募者を見るとき、気にしているのは「辞めた期間の短さ」そのものではありません。面接官が確かめているのは、主に次の2つです。
- なぜ辞めたのかを、自分の言葉で筋道立てて説明できるか
- 同じ理由で、うちの会社もすぐに辞めてしまわないか
採用には、求人を出す費用や面接にかける時間、入社後の教育など、多くの手間がかかります。そのため面接官は、「この人は入社してもすぐに辞めないか」を一番気にしています。
前の会社への不満ばかりを話す人や、辞めた理由があいまいな人は、「うちでも同じことが起きるかもしれない」と受け取られます。反対に、何が合わなかったのかを冷静に分析し、次の会社選びでどう防ぐかまで話せる人は、むしろ自分をよく理解している人として評価されることもあります。
つまり、試用期間での退職が次の転職に響くかどうかは、辞める前の準備と、面接での説明で大きく変わるのです。
辞める前にやっておくこと
勢いで辞めてしまうと、次の転職で説明に困ったり、同じ失敗を繰り返したりしてしまいます。退職を伝える前に、次の3つを済ませておきましょう。
合わなかった理由を説明できる言葉にする
まずは、何が合わなかったのかを書き出します。そのうえで、不満の言葉を事実の言葉に置き換えます。
| 不満の言葉 | 事実の言葉に置き換えた例 |
|---|---|
| 聞いていた話と全然違う | 求人では企画職と聞いていたが、実際の業務はほぼ電話営業だった |
| 職場の雰囲気が最悪 | 個人で成果を競う評価制度で、チームで働きたい自分の考えと合わなかった |
| 残業が多すぎる | 月の残業が40時間を超え、事前に聞いていた月10時間程度と大きく違った |
事実の言葉にしておくと、上司に退職を伝えるときにも、次の面接で理由を聞かれたときにも、そのまま使えます。
なお、仕事に慣れていないだけ、まだ人間関係ができていないだけ、という理由であれば、あと少し様子を見ることで解決する場合もあります。書き出してみて理由がはっきりしない方は、すぐに辞めると決める前に、気持ちを整理してみましょう。整理の仕方は「仕事に行きたくない時の対処法」で解説しています。
次を決めてから辞めるか先に辞めるかを決める
試用期間で辞める場合に特に気をつけたいのが、お金の問題です。自己都合で退職した場合、失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取るには、原則として退職前2年間に被保険者期間が12か月以上必要です。前の会社での加入期間を合わせて条件を満たせる場合もありますが、試用期間だけでは条件を満たせないことが多いでしょう。
失業保険を当てにできない場合は、在職中に次の仕事を探し始めるか、辞めた後の生活費を確保してから辞めるかを決めておきましょう。受給の条件は「失業保険の自己都合のもらい方」で詳しく解説しています。
次の会社選びで同じミスマッチを防ぐ基準を作る
試用期間で辞める人の多くは、入社前に思い描いていた仕事や職場と、実際の姿が違っていたことが原因です。次の会社で同じことを繰り返さないために、今回の経験から「次の会社選びで必ず確かめること」を決めておきましょう。
- 仕事内容が違った場合:面接で、入社後に担当する業務と1日の流れを具体的に聞く
- 働き方が違った場合:平均の残業時間や休日出勤の頻度を、面接や転職エージェントを通じて確かめる
- 社風が合わなかった場合:評価の仕組みや、チームで働くのか個人で働くのかを確かめる
この基準は、次の面接で「なぜ当社を選んだのか」を話すときの軸にもなります。
次の転職に響かない辞め方
退職のルールを守り、円満に辞めることは、次の転職でマイナスにしないための大前提です。
上司には早めに対面で伝える
退職の意思は、まず直属の上司に伝えます。メールやチャットで済ませず、「ご相談したいことがあるので、お時間をいただけますか」と時間を取ってもらい、対面で伝えましょう。
試用期間中は、会社も本採用に向けて教育を進めている段階です。伝えるのが遅れるほど、会社にかかる負担も大きくなります。辞めると決めたら、できるだけ早く伝えることが、結果的に自分を守ることにつながります。
理由は不満ではなく合わなかった事実で伝える
退職の理由は、会社や人への批判ではなく、自分と合わなかった事実として伝えます。先ほど書き出した「事実の言葉」を使いましょう。
入社前は企画の仕事を中心に担当すると伺っていましたが、実際の業務は営業が中心で、自分が目指している方向と大きく違うと感じています。この1か月、自分なりに取り組んでみましたが、このまま続けても会社のお役に立てる自信が持てません。大変申し訳ないのですが、試用期間中ではありますが、退職させていただきたいと考えております。
短い期間でご迷惑をおかけして申し訳ありません。実際に働いてみて、自分には今の働き方を続けることが難しいとわかりました。中途半端な形で続けるよりも、早めにお伝えするべきだと考え、ご相談させていただきました。退職日は、引き継ぎの期間も含めてご相談させてください。
引き止められた場合も、退職の意思がはっきりしていることを落ち着いて伝えれば十分です。引き止めへの対応は「退職を引き止められたときの断り方」で解説しています。
引き継ぎと返却物を済ませて円満に辞める
試用期間中は担当している業務が少ないこともありますが、関わっていた業務があれば、引き継ぎの資料をまとめておきましょう。社員証や制服、パソコンなど、会社から借りているものは退職日までに返却します。
退職届の提出が必要かどうかは会社によって違うため、上司や人事に確認しましょう。書き方は「退職届・退職願の書き方」で、退職までの全体の流れは「できるだけ早く円満に仕事を辞める方法」で紹介しています。
次の転職で試用期間の退職を説明する方法
辞めた後の転職活動では、試用期間での退職をどう伝えるかが大切です。
短期間でも履歴書には書く
試用期間で辞めた場合でも、正社員として入社した会社は、履歴書の職歴欄に書くのが基本です。雇用保険や年金の加入記録から、入社後に職歴が分かることもあります。書かずに隠すと、経歴詐称と受け取られるおそれがあります。
職歴欄には、「〇〇株式会社 入社」「〇〇株式会社 一身上の都合により退職」と書くのが一般的です。退職の理由を詳しく書く必要はありません。
面接では辞めた理由と次の会社選びの基準をセットで話す
面接で短期離職の理由を聞かれたら、辞めた理由だけで終わらせず、そこから学んだことと次の会社選びの基準までをセットで話しましょう。
前職では企画職として入社しましたが、実際には営業が中心の業務で、企画の仕事に携わる見込みが立たなかったため、試用期間中に退職しました。入社前に業務内容を十分に確認しなかった反省から、今回は担当業務を具体的に確認したうえで応募しています。御社の求人で〇〇の業務に携われると伺い、これまでの経験も生かせると考えて志望しました。
このように、事実、反省、次の基準の順に話すと、「同じ理由でまた辞めるのでは」という面接官の不安を先回りして解消できます。理由の伝え方の例文は「短期離職の理由の書き方・伝え方」でも紹介しています。
- 短期間でも、正社員で入社した会社は職歴に書く
- 面接では「事実→反省→次の会社選びの基準」の順に話す
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ここまで読んでも、辞めるべきか、もう少し続けるべきか迷っている方もいるはずです。試用期間での退職は、早く判断できる反面、勢いで決めると後悔が残りやすい選択でもあります。
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よくある質問
試用期間中でも即日で辞められますか?
原則は、退職を申し出てから2週間後です。ただし、会社が合意した場合や、心身の不調などのやむを得ない事由がある場合、聞いていた労働条件と実際の条件が違う場合は、即日や2週間より早く辞められることがあります。まずは上司に相談し、退職日を話し合いましょう。
試用期間中に辞めたら損害賠償を請求されますか?
通常の手順で退職する限り、損害賠償を請求されることはほとんどありません。研修費などを違約金として請求することも、労働基準法第16条で禁止されています。不当な請求を受けた場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談しましょう。
試用期間で辞めた会社は履歴書に書かなくてもいいですか?
正社員として入社した会社は、試用期間で辞めた場合でも書くのが基本です。書かずに隠すと、後から分かったときに経歴詐称と受け取られるおそれがあります。面接で理由を説明できるように準備しておくほうが安全です。
試用期間が終わるまで待ってから辞めたほうがいいですか?
試用期間が終わるまで待っても、短期離職であることに大きな違いはありません。合わない理由がはっきりしていて、続けても変わらないと判断できるなら、早めに伝えるほうが会社の負担も、自分の負担も小さく済みます。一方で、仕事に慣れていないことが理由なら、試用期間の終わりまで様子を見て判断するのも一つの方法です。
まとめ
試用期間中でも、正社員であれば退職を申し出てから2週間で辞められます。次の転職でマイナスを最小限にするために、次のことを押さえておきましょう。
- 就業規則を確認し、ルールに沿って早めに上司へ伝える
- 合わなかった理由を、不満ではなく事実の言葉にしておく
- 失業保険を当てにできない場合は、お金の準備をしてから辞める
- 次の会社選びで同じミスマッチを防ぐ基準を作る
- 面接では、辞めた理由と次の会社選びの基準をセットで話す
試用期間での退職は、早く判断できたということでもあります。今回の経験を次の会社選びに生かせば、短期離職は失敗ではなく、自分に合う働き方を見つけるための一歩になります。



