退職を言い出せない、引き止められて辞められない。そんなときに頼れるのが退職代行ですが、「本当に辞められるのか」「違法な業者に頼んでしまわないか」と不安な方も多いはずです。
退職代行は、運営元によって会社とできるやり取りの範囲が法律で決まっています。自分に必要な対応と依頼先が合っていないと、お金を払ったのに話が進まないこともあります。
この記事では、退職代行の運営元ごとの違いと費用、失敗しない選び方、申し込みから退職までの流れ、使った後の転職への影響までを解説します。読み終えるころには、自分に合う依頼先がわかり、安心して退職の一歩を踏み出せます。
退職代行は会社と交渉が必要かどうかで依頼先を選ぶ
退職代行を選ぶときに最初に考えたいのは、「退職の意思を伝えてもらうだけでよいか」「会社との交渉まで必要か」です。運営元によってできることが違うため、ここを間違えると、会社が業者を相手にせず退職の手続きが止まってしまうことがあります。
| 自分の状況 | 向いている依頼先 |
|---|---|
| 辞めたいと伝えてもらえれば十分 | 民間企業・労働組合・弁護士のどれでもよい |
| 有給休暇の消化や退職日を会社と調整したい | 労働組合または弁護士 |
| 未払いの残業代や退職金を請求したい、会社ともめている | 弁護士 |
また、正社員であれば、退職は自分で伝えても2週間で成立します。退職代行は「自分では伝えられない」「伝えるとトラブルになりそう」という場合に、費用を払って頼むサービスだと考えておきましょう。
退職代行で頼めることと利用する人の実態
退職代行は、本人の代わりに会社へ退職の意思を伝え、退職に必要なやり取りを代わりに行うサービスです。会社の上司と直接話さずに辞められるため、利用する人は増えています。
マイナビの「退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)」では、直近1年間に転職した人のうち16.6%が退職代行を利用していました。利用した理由で多かったのは、次の3つです。
- 引き止められた(引き止められそうだ)から:40.7%
- 自分から退職を言い出せる環境でないから:32.4%
- 退職を伝えた後にトラブルになりそうだから:23.7%
同じ調査では、2024年1〜6月に退職代行を使って退職した人がいた企業は23.2%で、およそ4社に1社にのぼります。退職代行は、もう特別な辞め方ではなくなっています。
退職代行を使う前に知っておきたい法律のルール
依頼先を選ぶ前に、退職と退職代行に関わる法律のルールを押さえておきましょう。ここを知っておくと、業者の説明が正しいかどうかを自分で判断できます。
自分で伝えても2週間で辞められる
期間の定めのない雇用(一般的な正社員)の場合、民法第627条により、退職の意思を伝えてから2週間が経過すれば、会社の承諾がなくても退職できます。
つまり、退職代行を使わなくても、退職届を郵送するなどして意思を伝えれば辞めることはできます。退職代行の役割は、辞められない人を辞めさせることではなく、会社と直接やり取りする負担を代わりに引き受けることです。
弁護士以外の業者は会社と交渉できない
弁護士法第72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で、法律事務を取り扱うことを禁止しています。退職代行では、会社との交渉がこの法律事務にあたるとされています。
愛媛県労働委員会の資料(令和7年3月作成)でも、弁護士しかできない業務として、未払い残業代や退職金の請求、退職条件や有給消化(退職日)などの交渉が挙げられています。弁護士ではない業者がこうした交渉を行おうとすると、会社が業者を交渉相手として認めず、退職の手続きが止まることがあるとしています。
一方で、「退職したい」という意思を伝えるだけであれば、弁護士資格のない業者でも対応できるとされています。なお、労働組合は、労働組合法に基づき、組合員のために会社と団体交渉をする権利を持っています。
退職代行を使っただけで懲戒や損害賠償になることは原則ない
退職は法律で認められた労働者の権利です。退職代行を使ったこと自体を理由に、懲戒解雇になったり、損害賠償を請求されたりすることは原則としてありません。
ただし、会社の備品を返さない、重要な業務を放り出して大きな損害を与えた、といった場合は話が別です。退職代行を使う場合でも、貸与品の返却や最低限の引き継ぎはきちんと行いましょう。
- 正社員なら、自分で伝えても2週間で辞められる
- 有給休暇や退職日の交渉ができるのは、労働組合と弁護士だけ
- 退職代行を使っただけで懲戒や損害賠償になることは原則ない
運営元3種類の違いと費用の目安
退職代行の運営元は、民間企業、労働組合、弁護士の3種類です。できることと費用の目安は次のとおりです。
| 運営元 | 退職の意思を伝える | 有給・退職日の交渉 | 未払い賃金などの請求 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 民間企業 | できる | できない | できない | 2万〜5万円 |
| 労働組合 | できる | できる(団体交渉) | 限られる | 2.5万〜5万円 |
| 弁護士 | できる | できる | できる | 5万〜10万円 |
費用は各サービスの公式サイトで公開されている料金をもとにした目安です。追加料金の有無はサービスによって違うため、申し込む前に必ず確認しましょう。
民間企業
株式会社などが運営する退職代行です。料金が比較的安い一方で、できるのは退職の意思を伝えることまでです。会社が「有給は認めない」「本人と直接話したい」と言ってきた場合、それ以上のやり取りはできません。
会社との関係が悪くなく、意思を伝えてもらうだけで辞められそうな人に向いています。
労働組合
労働組合が運営する、または労働組合と連携している退職代行です。労働組合は、組合員のために会社と団体交渉ができるため、有給休暇の消化や退職日の調整といった交渉にも対応できます。
民間企業が窓口になり、労働組合と連携しているサービスもあります。その場合は、交渉を担当するのが労働組合であること、交渉を頼むには組合への加入が必要かどうかを、申し込む前に確認しておきましょう。民間企業が自ら交渉まで行うと、弁護士法に触れるおそれがあるためです。
弁護士
弁護士や法律事務所が運営する退職代行です。退職の意思を伝えることから、有給休暇の交渉、未払いの残業代や退職金の請求まで、法律に関わるやり取りをすべて任せられます。
費用は高めですが、会社とすでにもめている、損害賠償をちらつかされている、未払いの賃金がある、といった場合は弁護士に頼むのが安全です。
退職代行が向いている人と自分で伝えたほうがいい人
退職代行は便利なサービスですが、誰にでも必要なわけではありません。前述の愛媛県労働委員会の資料でも、会社と直接接触せずに済む一方で、自分で手続きすれば不要だった費用がかかるため、費用対効果を考えて判断することが大切だとしています。
| 退職代行が向いている人 | 自分で伝えたほうがいい人 |
|---|---|
| 上司からのパワハラや強い引き止めがあり、話すこと自体が難しい | 上司と普通に話せる関係で、引き止めも強くない |
| 退職を伝えたら、怒鳴られる・辞めさせてもらえないと感じている | 会社にきちんと説明して、円満に辞めたい |
| 心身の不調で、会社と連絡を取るのがつらい | 同じ業界で転職する予定で、人間関係を残しておきたい |
自分で伝えられそうな方は、「できるだけ早く円満に仕事を辞める方法」や「退職を引き止められたときの断り方」も参考にしてください。
失敗しない退職代行の選び方
退職代行は、サービスによって対応範囲も料金も大きく違います。申し込む前に、次の4つを確認しましょう。
必要な対応範囲と運営元が合っているか
まずは、自分に必要な対応が「意思を伝えるだけ」なのか「交渉や請求まで必要」なのかを決め、それに合う運営元を選びます。有給休暇を残さず使いたいなら、交渉ができる労働組合か弁護士を選ぶのが安心です。
料金に追加費用がないか
表示されている料金のほかに、追加の費用がかからないかを確認します。特に弁護士の退職代行では、未払い賃金などを回収した場合に、回収額の一定割合を成功報酬として支払う仕組みが一般的です。
後払いや返金保証があるか
退職できなかった場合に全額を返金する保証や、退職が決まってから支払える後払いに対応しているサービスなら、お金だけ払って辞められないというリスクを減らせます。
運営会社の情報が公開されているか
公式サイトに、運営会社の名前、所在地、代表者などがきちんと書かれているかを確認しましょう。労働組合なら組合の名前、弁護士なら法律事務所の名前が明記されているかも見ておきます。運営元がわからないサービスは避けたほうが安全です。
- 必要な対応範囲と運営元が合っているか
- 表示料金のほかに追加費用がないか
- 後払いや返金保証があるか
- 運営会社の情報が公開されているか
申し込みから退職までの流れ
退職代行を使った退職は、一般的に次のような流れで進みます。
- LINEやメール、電話で無料相談をする
- 料金を確認して申し込み、支払いをする(後払いの場合は退職後)
- 希望した日に、退職代行が会社へ退職の意思を伝える
- 退職届や会社から借りている物を郵送で返す
- 離職票や源泉徴収票などの書類を郵送で受け取る
会社への連絡は、早ければ申し込んだ当日や翌日に行ってもらえます。退職日までの期間は、残っている有給休暇を使ったり、欠勤扱いにしたりして、出社しないまま退職日を迎えるケースが多くあります。
退職代行を使う前に準備しておくこと
退職代行を使うと、会社と直接やり取りする機会がほとんどなくなります。後から困らないように、申し込む前に次のことを済ませておきましょう。
- 会社に置いている私物を持ち帰る
- 社員証、制服、パソコンなど、会社から借りている物をまとめておく
- 残っている有給休暇の日数を確認しておく
- 未払いの残業代などがあれば、勤務時間の記録や給与明細を手元に残す
- 担当している業務の状況を、簡単なメモにまとめておく
引き継ぎのメモを用意しておくと、退職代行を通じて会社に渡せます。最低限の引き継ぎをしておくことは、トラブルを防ぐだけでなく、自分の気持ちを整理して次に進むためにも役立ちます。
退職後の健康保険や年金、税金の手続きは「退職後の手続き一覧」で、期限の順に確認できます。
退職代行で辞めても次の転職に響かないか
退職代行を使ったことを、履歴書や職務経歴書に書く必要はありません。職歴欄には、ほかの退職と同じように「一身上の都合により退職」と書けば十分です。
採用する側が面接で確かめたいのは、退職の方法ではなく、「なぜ辞めたのか」「うちの会社では長く働けそうか」という点です。退職代行を使ったかどうかよりも、前の会社で何が合わなかったのか、次の会社では何を大切にしたいのかを、自分の言葉で説明できるかが大切です。
ただし、同じ業界で転職する場合は、人のつながりから退職の経緯が伝わる可能性もゼロではありません。業界内での人間関係を残しておきたい場合は、自分で伝えられないかもあわせて考えてみましょう。退職理由の伝え方は「転職理由の伝え方」で解説しています。
編集部が紹介する退職代行
当サイトでは、会社との交渉に対応できるサービスを紹介しています。意思を伝えるだけの退職代行では、会社が「有給は認めない」「本人と直接話したい」と言ってきたときに、それ以上進められないためです。紹介しているのは、各社の公式サイトで公開されている情報で、当サイトで作った体験談や確かめられない口コミは載せていません。
- 会社と大きなトラブルはないが、自分から言い出しにくい:退職代行Jobs(労働組合と連携・後払い対応)
- 未払いの賃金がある、会社ともめている:弁護士法人ZEN(弁護士が交渉・請求まで対応)
退職代行Jobs|労働組合と連携し後払いにも対応
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 種類 | 退職代行(合同労働組合ユニオンジャパンと連携) |
| 料金 | 退職代行のみ27,000円(税込)/労働組合の加入込み29,000円(税込) |
| 支払い方法 | クレジットカード、コンビニ決済、PayPay、銀行振込、現金後払い(簡単な審査あり) |
| 受付 | 24時間365日・全国対応(LINE・メール・電話で無料相談) |
| 保証 | 退職できなかった場合は全額返金 |
| 運営会社 | 株式会社アレス |
- こんな人におすすめ:会社と大きなトラブルはないものの、自分から退職を言い出しにくい方
- 当サイトの基準で評価が高い点:料金と支払い方法が公式サイトに明記されていて、労働組合に加入すれば会社との交渉にも対応できる
- 注意点:未払いの残業代の請求や裁判の代理はできません。金銭トラブルがある場合は弁護士の退職代行を検討しましょう
※ 公式サイトで公開されている内容です(確認日:2026年10月10日)。サービスの内容は変わることがあるため、申し込む前に公式サイトで確かめてください。
弁護士法人ZEN|弁護士が退職と金銭請求の交渉まで対応
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 種類 | 弁護士による退職代行 |
| 料金 | 27,500〜77,000円(税込) |
| オプション費用 | 残業代・退職金などの請求で、会社が支払いを拒否し弁護士が交渉した場合に回収額の25%(税別) |
| 相談 | LINE・メールで無料相談(全国・24時間受付) |
| 運営 | 弁護士法人汐留パートナーズ法律事務所 |
- こんな人におすすめ:未払いの残業代・給与・退職金がある方や、会社と揉めていて交渉が必要な方
- 当サイトの基準で評価が高い点:有給消化や残業代・退職金などの請求について、弁護士が会社と交渉できる
- 注意点:料金は依頼内容によって変わります。退職の連絡だけで足りる場合は、費用を抑えた退職代行とも比べてみましょう
※ 公式サイトで公開されている内容です(確認日:2026年10月22日)。サービスの内容は変わることがあるため、申し込む前に公式サイトで確かめてください。
辞めるか迷っているなら1分の診断で確かめる
退職代行を使えば、会社と話さずに辞めることができます。一方で、辞めた後にどうするかまで決めておかないと、次の職場選びで焦ってしまうこともあります。
無料の診断(1分ほど)
まだ迷っているなら、1分の質問で整理する
退職代行を使うかどうかの前に、本当に今辞めるべきか迷いが残っている方は、一度整理しておきましょう。元採用責任者の視点で作った診断に答えると、今動くべきか、まだ今の職場で試せることがあるかがわかります。
転職すべきか診断を受けるよくある質問
退職代行は違法ではありませんか?
退職の意思を伝えるだけであれば、弁護士ではない業者が行っても問題ないとされています。ただし、有給休暇の交渉や未払い賃金の請求など、法律に関わる交渉を弁護士ではない業者が報酬を得て行うと、弁護士法に触れるおそれがあります。交渉が必要な場合は、労働組合か弁護士の退職代行を選びましょう。
退職代行を使えば即日で辞められますか?
退職代行が会社に連絡するのは即日でも可能ですが、法律上の退職日は、原則として意思を伝えてから2週間後です。その間は、残っている有給休暇を使うなどして、出社せずに退職日を迎えることができます。会社が合意すれば、即日で退職できる場合もあります。
退職代行を使ったら会社から本人に連絡がきますか?
退職代行から「本人には直接連絡しないでほしい」と伝えてもらうのが一般的です。ただし、会社がそれに従う法的な義務はないため、連絡がくる可能性はあります。連絡がきても、無理に対応する必要はありません。退職代行に連絡があったことを伝え、対応を任せましょう。
退職代行を使ったら懲戒解雇になりますか?
退職代行を使ったこと自体を理由に、懲戒解雇になることは原則としてありません。退職は法律で認められた権利だからです。ただし、会社の物を返さないなど、退職の方法とは別の問題がある場合はトラブルになりかねないため、貸与品の返却は必ず行いましょう。
まとめ
退職代行は、運営元によって会社とできるやり取りの範囲が違います。自分に必要な対応に合わせて選べば、お金を払ったのに辞められないという失敗を防げます。
- 退職の意思を伝えるだけでよいなら、どの運営元でも対応できる
- 有給休暇の消化や退職日の調整をしたいなら、労働組合か弁護士を選ぶ
- 未払いの賃金がある、会社ともめているなら、弁護士を選ぶ
- 料金の追加費用、後払いや返金保証、運営会社の情報を確認する
- 私物の持ち帰りや貸与品の準備は、申し込む前に済ませておく
退職代行は、会社と向き合うのがつらいときに、自分を守るための手段です。正しく選んで辞めたあとは、次の会社選びで同じ悩みを繰り返さないように、何を大切にしたいかを整理するところから始めてみてください。



