毎月の給料日が来ても、家賃や生活費を払うと手元にほとんど残らない。このまま今の会社にいても生活が楽になる気がしない。そんな思いから「給料が安いし、もう辞めたい」と考えていませんか。一方で、辞めて本当に給料が上がるのか、今より悪くならないかと不安で、踏み切れずにいる方も多いはずです。
私はWEB系事業の責任者として、300名以上の採用面接に携わってきました。
この記事では、採用する側の視点も交えながら、給料が安くて辞めたいと感じたときに、転職と今の会社のどちらで給料を上げるべきかを判断するための4つのステップを解説します。上から順に確かめていけば、自分が次に何をすればいいかが決まります。
勢いで退職しても給料は上がらない
給料が安いからといって、勢いで退職しても給料は上がりません。給料を上げるのは「辞めること」ではなく、「次にどこで働くか」だからです。
厚生労働省の「令和7年雇用動向調査」では、転職して前の会社より賃金が増えた人は40.8%、減った人は31.0%でした。転職すれば誰でも給料が上がるわけではなく、3人に1人近くは下がっています。
特に、次の職場を決めずに辞めると、収入が途切れる焦りから、条件を十分に確かめないまま転職先を決めてしまいがちです。自己都合で退職した場合、失業保険はすぐには受け取れません(詳しくは「失業保険の自己都合のもらい方」で解説しています)。生活が苦しい状態で収入がなくなれば、さらに苦しくなってしまいます。
一方で、今の会社にいれば給料が上がるとも限りません。厚生労働省の「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査」では、1人あたりの賃金の引上げ額は平均で月13,601円(4.4%)でした。比較できる1999年以降で最も高い水準ですが、会社によって差があり、ほとんど上がらない会社もあります。
つまり、転職と今の会社のどちらで給料が上がるかは、人によって違います。大切なのは、目先の給料ではなく、将来どこまで給料を上げられるかで比べることです。次の4つのステップで確かめていきましょう。
- 給料は正しく支払われているか(最低賃金・残業代)
- 経験不足か、仕組みや給与水準の問題か
- 評価の時期と昇給の条件
- 上司に聞いて具体的な答えがあるか
- 会社の業績や業界の先行き
- 上司や先輩の給料で生活に余裕が出るか
- 業界や職種の給料の伸び方
- 転職直後に下がっても生活できるか
- STEP2・3で上がる見込みがある → 今の会社で昇給を狙う
- STEP2・3で見込みがなくSTEP4で見込みがある → 在職中に転職の準備をする
- どれも見込みがない → 経験を積むか目指す職種を見直す
STEP1 給料が上がらない原因を知る
まずは、なぜ給料が上がらないのかを確かめます。原因によって、今の会社で解決できるのか、環境を変えないと解決できないのかが変わります。
給料が正しく支払われていない
最初に確かめたいのは、そもそも給料が法律どおりに支払われているかです。給料が安いと感じる原因が、会社の支払いの誤りや違反にあることもあります。
最低賃金は、最低賃金法にもとづいて都道府県ごとに決められています。令和7年度は全国加重平均で時給1,121円、最も高い東京都では1,226円です(厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金額の答申」)。月給制の場合は、次の式で確かめられます(厚生労働省「最低賃金のチェック方法」)。
- 月給÷1か月の平均所定労働時間≧住んでいる都道府県の最低賃金(時間額)
このとき、月給からは通勤手当や残業代、家族手当、精皆勤手当などを除いて計算します。
残業代も確認しましょう。労働基準法第37条では、法定労働時間を超えて働いた場合、会社は25%以上の割増賃金を支払わなければならないと定めています。毎日残業しているのに給与明細に残業代がない、決まった額しか出ていないという場合は、正しく支払われていない可能性があります。
正しく支払われていない場合は、転職か今の会社かを考える前に、会社に確認しましょう。会社が対応しないときは、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などにある「総合労働相談コーナー」に無料で相談できます。
経験やスキルがまだ給料に反映されていない
入社して数年以内の場合、経験やスキルが給料に反映される前の段階であることも少なくありません。多くの会社では、任される仕事の範囲や役職が上がるにつれて給料も上がる仕組みになっています。
この場合は、今の会社で経験を積むことで給料が上がる余地があります。STEP2で、どうすれば上がるのかを確かめましょう。
評価や昇給の仕組みがない
評価制度がない、あっても何をすれば給料が上がるのかがわからない、何年働いても昇給がほとんどないという会社もあります。こうした会社では、本人がどれだけ頑張っても給料が上がりにくいのが現実です。
評価そのものに納得がいかない場合は、「会社の評価に納得いかないのはなぜ?」も参考にしてください。
会社や業界の給与水準が低い
業界や会社によって、給料の水準そのものが違います。同じような仕事をしていても、業界が違うだけで給料に大きな差が出ることがあります。会社の給与水準が低い場合は、社内で一番上の役職まで上がっても、生活に余裕が出る給料に届かないこともあります。
雇用形態で収入が抑えられている
契約社員や派遣社員、パート・アルバイトとして働いている場合、正社員と比べて昇給や賞与の仕組みがないことで、収入が抑えられていることがあります。この場合は、今の会社で正社員になれる制度があるかを確かめるか、正社員として働ける会社への転職を考えます。
- 最低賃金と残業代が正しく支払われているか
- 経験が浅く、まだ給料に反映されていないだけか
- 評価制度や会社の給与水準に原因がないか
- 雇用形態で昇給や賞与が抑えられていないか
STEP2 今の会社で昇給の可能性を確かめる
原因がわかったら、今の会社で近いうちに給料が上がる可能性があるかを確かめます。
評価の時期と昇給の条件を確認する
まずは、就業規則や賃金規程、評価制度の資料を確認しましょう。昇給がいつ、どのような基準で決まるのかが書かれていることが多いです。次のような点を確認します。
- 昇給や評価の時期(年1回、半年に1回など)
- 昇給の基準(成果、役割、勤続年数など)
- 昇進したときに給料がどれくらい上がるか
資料がない、読んでもよくわからない場合は、次の方法で上司に確かめましょう。
上司に昇給の見込みを聞く
昇給の条件を一番よく知っているのは、評価をする上司です。「給料を上げたいので、何ができるようになれば次の段階に進めるのかを教えてください」のように、前向きな相談として聞いてみましょう。
給料の話は切り出しにくいかもしれませんが、評価する側にとっても、目標がはっきりしている人のほうが評価しやすいものです。いつまでに、何ができれば、どれくらい上がるのかが具体的にわかれば、今の会社で頑張る意味があるかを判断できます。
反対に、聞いても「会社の業績次第」「今は上げられない」と具体的な答えが返ってこない場合は、近いうちに上がる見込みは低いと考えましょう。
STEP3 今の会社にいて将来の収入が下がらないか確かめる
近いうちの昇給だけでなく、今の会社にいて将来も収入が上がり続けるのかを確かめます。今は昇給があっても、将来の上限が低ければ、数年後にまた同じ悩みを抱えることになります。
会社の業績や業界の先行きを確認する
会社の業績が悪化している、業界全体が縮小しているといった場合、将来は昇給が止まったり、賞与が減ったりする可能性があります。次のような点を確認しましょう。
- ここ数年の賞与や昇給の額が減っていないか
- 社員の採用が止まっている、辞める人が増えていないか
- 会社の主な事業の市場が伸びているか、縮んでいるか
上場企業であれば決算資料で業績を確認できます。そうでない場合も、賞与の推移や社内の雰囲気からある程度は読み取れます。
上司や先輩の給料から将来の上限を見る
今の会社で将来どこまで給料が上がるかは、5年後、10年後に自分がなっていそうな立場の人を見るとわかります。上司や先輩がどれくらいの給料をもらっているか、給与テーブル(役職ごとの給料の表)がある場合は役職ごとの上限を確認しましょう。
その給料で、自分が望む生活ができるかを考えます。家族を持ちたい、家を買いたいといった将来の計画がある場合は、その費用も含めて考えましょう。上限まで上がっても生活に余裕が出ないなら、今の会社では収入の悩みは解決しにくいと判断できます。
STEP4 転職で将来の収入が上がるか確かめる
今の会社では将来の収入が見込めない場合は、転職で収入が上がるかを確かめます。ここでも、転職直後の給料だけでなく、将来どこまで上がるかで比べることが大切です。
業界や職種ごとの給料の伸び方を比べる
給料は、年齢や経験とともに伸びやすい業界や職種と、あまり伸びない業界や職種があります。転職先を考えるときは、今の給料が上がるかだけでなく、その業界や職種で経験を積んだ先にどれくらいの給料になるかを確かめましょう。
厚生労働省の「職業情報提供サイト(job tag)」では、職業ごとの仕事内容や賃金の目安を調べられます。今の職種と、転職先として考えている職種を比べてみましょう。
求人の給与の幅とモデル年収を見る
転職サイトで、自分の職種や経験に近い求人を探し、給与の幅(「月給25万〜40万円」など)を確認します。下限だけでなく上限を見ることで、その会社で経験を積んだときにどこまで上がるかの目安になります。「入社3年目 年収◯万円」のようなモデル年収が書かれている求人も参考になります。
自分の経験でどれくらいの給料が見込めるかがわからない場合は、転職エージェントに相談したり、スカウト型の転職サイトに登録して届く提示額を見たりすると、客観的な目安がつかめます。
転職直後に下がっても生活できるか計算する
将来の給料が伸びる業界や職種でも、未経験から転職する場合などは、転職直後の給料が一時的に下がることがあります。生活が苦しい状態で給料が下がると、転職したこと自体を後悔しかねません。
毎月の生活費を書き出し、転職直後の給料で生活できるかを計算しましょう。下がると生活できない場合は、今と同じかそれ以上の給料の求人に絞って探すのが現実的です。
確かめた結果別にやること
4つのステップで確かめた結果に合わせて、次の行動を決めましょう。
今の会社で昇給を狙う
STEP2やSTEP3で、今の会社で給料が上がる見込みがあると判断できた場合は、昇給の条件を満たすことに集中しましょう。上司と確認した「いつまでに、何ができればいいか」を目標にし、評価の時期までに成果を出せるよう動きます。
次の評価の時期を判断の期限にするのもおすすめです。期限までに上がらなければ、もう一度STEP3以降を確かめ直しましょう。
在職中に転職の準備をする
今の会社では将来の収入が見込めず、転職で上がる見込みがある場合は、在職中に転職の準備を始めましょう。収入を保ったまま転職活動ができるので、焦って条件の合わない会社を選ぶことを防げます。
面接では、給料が理由の転職でも、伝え方次第でマイナスにはなりません。「成果が給料に反映される環境で働きたい」のように、前向きな理由として伝えましょう。伝え方は「転職理由の伝え方」で詳しく解説しています。
また、給料だけで転職先を選ぶと、仕事内容や働き方が合わずに後悔することがあります。「転職で失敗しないための事例」も確認しておきましょう。
本当に今が転職するタイミングなのか迷う方は、次の診断で今の状態を整理してみてください。
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給料への不満が転職で解決できるものなのか、今の会社で手を打つべきものなのかは、一人では判断しにくいものです。元採用責任者の視点で作った診断に答えると、今動くべきか、まだ今の職場で試せることがあるかがわかります。
転職すべきか診断を受ける経験を積むか目指す職種を見直す
今の会社でも転職でも給料が上がる見込みがない場合は、今の会社で経験やスキルを積んでから動くほうが、将来の収入につながります。今の仕事で身につけた経験は、次の転職で給料を上げる材料になるからです。
また、今の職種のままでは給料の上限が低い場合は、給料が伸びやすい職種への方向転換を考えるのも一つの方法です。その場合は、目指す職種で求められる経験や資格を調べ、今のうちから準備を進めておきましょう。
よくある質問
給料が安いことを理由に辞めるのは甘えですか?
甘えではありません。生活を支えるための給料は、働くうえで大切な条件の一つです。ただし、勢いで辞めると収入が途切れ、かえって生活が苦しくなることがあります。今の会社で上がる見込みと、転職で上がる見込みを確かめてから判断しましょう。
副業で収入を補うのはありですか?
会社が副業を認めているなら、収入を補う方法の一つになります。まずは就業規則で副業が認められているかを確認しましょう。ただし、本業の時間を削って副業をすると、本業での評価や昇給に影響することもあります。副業で得られる収入と、本業で給料を上げるための時間のバランスを考えて判断しましょう。
給料だけで転職先を選んでもいいですか?
給料は大切な条件ですが、給料だけで選ぶのはおすすめしません。給料が高くても、残業が多くて時給に換算すると今より低い、仕事内容が合わずに長く続けられないということもあります。給料に加えて、働く時間や仕事内容、将来の伸び方も合わせて比べましょう。
まとめ
給料が安くて辞めたいと感じたときは、勢いで辞めずに、次の4つのステップで転職か残るかを判断しましょう。
- 給料が上がらない原因を知る(まずは給料が正しく支払われているかを確認する)
- 今の会社で昇給の可能性を確かめる
- 今の会社にいて将来の収入が下がらないか確かめる
- 転職で将来の収入が上がるか確かめる
大切なのは、目先の給料ではなく、将来どこまで給料を上げられるかで比べることです。今の会社に上がる道があるならそこを目指し、ないなら在職中に転職の準備を始めましょう。まずは今日、給与明細と就業規則を確認するところから始めてみてください。



