35歳を過ぎて、「このまま今の会社にいていいのだろうか」と考え始めていませんか。一方で、「35歳を過ぎたら転職は厳しい」「未経験の仕事にはもう移れない」といった話を聞き、動き出せずにいる方も多いはずです。
私はWEB系事業の責任者として、300名以上の採用面接に携わり、採用の決裁まで担当してきました。30代後半の応募者も数多く面接してきた立場から言えるのは、30代後半の転職は厳しいわけではなく、評価のされ方が20代とは大きく変わるということです。
この記事では、35歳の壁と言われる理由と今の実態、採用側が30代後半の応募者で確かめていること、そして採用される人の動き方を解説します。読み終えるころには、自分が今動くべきか、どう動けば採用されるかが見えているはずです。
30代後半の転職は厳しくないが20代と同じ動き方では通らない
30代後半の転職は、決して厳しいものではありません。ただし、20代と同じ動き方では通りません。評価される軸が「これから伸びるか(ポテンシャル)」から「入社してすぐに何ができるか(即戦力としての期待値)」に変わるからです。
厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」では、1年間に転職して入社した人の割合(転職入職率)は、35〜39歳で男性7.9%、女性10.5%でした。30〜34歳(男性10.3%、女性13.2%)より低いものの、30代後半でも毎年多くの人が転職しています。同じ調査では、35〜39歳で転職した人のうち、前の会社より賃金が増えた人は45.5%で、減った人(24.3%)を大きく上回っています。
数字が示すとおり、30代後半でも転職はできますし、収入を上げている人も少なくありません。分かれ目になるのは年齢ではなく、即戦力としての期待値を採用側に伝えられるかどうかです。
35歳の壁と言われる理由と今の実態
「35歳の壁」という言葉には、根拠がある部分と、思い込みの部分があります。まずはその正体を正しく知っておきましょう。
未経験可の求人は30代後半から減っていく
35歳の壁と言われる一番の理由は、未経験者を育てる前提の求人が、30代後半から減っていくことです。
求人に年齢の上限を設けることは法律で原則として禁止されていますが(次の見出しで解説します)、例外として「長く勤めてキャリアを築いてもらう目的で、若い人を職業経験を問わずに採用する場合」は、年齢の上限を設けることが認められています。厚生労働省の「募集・採用における年齢制限禁止の義務化Q&A」では、この例外の対象は基本的に35歳未満が想定されています。
つまり、「未経験から育てる」求人は35歳未満を対象にしやすい仕組みになっていて、これが35歳の壁と言われる正体の一つです。
求人の年齢制限は法律で原則禁止されている
一方で、会社が求人で「35歳まで」のように年齢を区切ることは、労働施策総合推進法によって原則として禁止されています(ハローワークインターネットサービス「募集・採用における年齢制限禁止について」)。経験者を求める一般的な中途採用の求人であれば、年齢を理由に応募の門を閉ざされることはありません。
求人票に年齢が書かれていないからといって、選考で年齢がまったく見られないわけではありません。ただ、30代後半の選考で見られているのは年齢そのものより、その年齢にふさわしい経験と役割を担えるかどうかです。
経験者の採用は広がっている
多くの業界で人手不足が続く中、会社は育てる時間のかからない経験者を求めています。特に、現場のリーダーや管理職を担える人材は不足しがちで、30代後半はちょうどその役割を期待される年代です。
未経験の仕事に移る道は20代より狭くなりますが、これまでの経験を活かせる転職であれば、30代後半は選択肢が広がる時期でもあります。
採用側が30代後半の応募者で確かめていること
ここからは、私が面接官として30代後半の応募者をどう見ていたかをお伝えします。30代後半の選考で採用側が判断しているのは、ひと言でいえば「即戦力としての期待値がどれだけ高いか」です。期待値が高い人は採用し、低い人は見送ります。そのために、次の順番で確かめていました。
管理職やリーダー候補か一般職かを見極める
最初に考えるのは、その人を管理職やリーダー候補として採用するのか、一般職として採用するのかです。30代後半になると、同じ職種でも任せる役割の幅が大きく広がります。チームをまとめた経験や、後輩を育てた経験があるかどうかで、採用する枠そのものが変わります。
応募する側も、自分がどちらの枠で見られたいのかをはっきりさせておくことが大切です。管理職の経験がないのに管理職の求人ばかりに応募しても、通りにくくなります。反対に、リーダーの経験があるのに一般職として応募すると、「この経験なら別の役割を任せたい」と判断されることもあります。
業界のトレンドを把握しているか
次に見ていたのは、業界の流れをつかんでいるかどうかです。30代後半の人には、目の前の仕事をこなすだけでなく、業界でいま何が起きていて、これから何が求められるかを理解したうえで動いてほしいと考えます。
面接で業界の動きについて質問したとき、自分の言葉で答えられる人は、入社後も自分で考えて動ける人だと判断できました。反対に、今の会社のやり方しか知らない様子が見えると、新しい環境に合わせられるか不安が残ります。
強みを転職先でも再現できるか
そして最も重視していたのが、強みの再現性です。「前の会社でこんな成果を出した」という話そのものより、その成果をどうやって出したのか、同じやり方が自社でも通用するのかを確かめていました。
成果が会社の看板や恵まれた環境によるものなのか、本人の考え方や行動によるものなのかで、入社後に同じ成果を出せるかどうかは大きく変わります。成果に至るまでの考え方と行動を具体的に話せる人ほど、即戦力としての期待値は高くなります。
戦力になるまで時間と手間がかかる人は見送られる
反対に、30代後半で採用を見送っていたのは、戦力になるまでに時間と手間がかかると判断した人です。具体的には、次のような人です。
- 一から仕事を教える必要があり、育成のコストがかかる
- 価値観ややり方が固まっていて、新しい環境に合わせられそうにない
- ビジネスマナーなど、社会人として一般的な常識が身についていない
20代であれば、育成にかかる時間も将来への投資として考えられます。しかし30代後半には、入社してからすぐに成果を出すことが期待されます。「使えるようになるまで時間がかかりそうだ」と思われることが、30代後半の転職で一番避けたい評価です。
- 任せる役割:管理職やリーダー候補か、一般職か
- 業界の理解:業界の流れを自分の言葉で話せるか
- 強みの再現性:成果の出し方が転職先でも通用するか
- 見送られる人:育成に時間がかかる、価値観が固まっている、一般的な常識がない
30代後半で転職すべきか判断する基準
採用側が見ていることがわかったら、次は自分が今転職すべきかを判断しましょう。30代後半の転職は、20代よりも1回の判断の重みが大きくなります。次の3つの基準で確かめてみてください。
今の会社で5年後の自分に納得できるか
まずは、今の会社にいた場合の5年後を想像してみましょう。5年後の自分がいそうな立場の先輩や上司を見て、その姿に納得できるかどうかが判断の材料になります。
納得できるなら、無理に転職する必要はありません。今の会社で役割を広げたほうが、収入やキャリアにとってよい場合もあります。納得できない場合は、何に納得できないのか(役割、収入、働き方など)を具体的に書き出しておくと、転職先選びの軸になります。
即戦力として期待される経験があるか
次に、採用側の目線で自分の経験を見直します。管理職やリーダーとしての経験、業界の知識、再現できる強みのうち、自分が自信を持って語れるものはあるでしょうか。
自信を持って語れる経験があるなら、30代後半の転職市場で評価される可能性は十分にあります。思い当たるものがない場合は、今の会社で経験を積んでから動くほうが、条件のよい転職につながることもあります。
収入が一時的に下がっても家族の生活を守れるか
30代後半になると、家族やローンを抱えている方も多いはずです。転職先によっては、入社直後の年収が一時的に下がったり、転職活動が長引いたりすることもあります。
家族がいる場合は、動き出す前に転職を考えていることを伝え、収入が下がった場合に何か月生活できるかを一緒に確認しておきましょう。家族の理解を得ておくことは、焦らずに転職先を選ぶための土台になります。
それでも今動くべきか迷う方は、次の診断で今の状態を整理してみてください。
無料の診断(1分ほど)
まだ迷っているなら、1分の質問で整理する
30代後半の転職は、今動くべきか、今の会社で経験を積むべきかの見極めが大切です。元採用責任者の視点で作った診断に答えると、今動くべきか、まだ今の職場で試せることがあるかがわかります。
転職すべきか診断を受ける30代後半の転職で採用される人の動き方
転職すると決めたら、次の順番で進めましょう。どれも、採用側が確かめている「即戦力としての期待値」を伝えるための準備です。
経験を数字と再現性で棚卸しする
最初にやることは、これまでの経験の棚卸しです。担当した仕事、役割、出した成果を書き出し、成果はできるだけ数字で表します。
大切なのは、成果だけでなく「どうやってその成果を出したか」まで書き出すことです。課題をどう捉え、何を考え、どう動いたのかを整理しておくと、面接で強みの再現性を伝えられるようになります。
在職中にスカウトで市場価値を確かめる
棚卸しができたら、応募する前に自分の市場価値を確かめましょう。スカウト型の転職サービスに経歴を登録すると、どんな会社がどんな条件で声をかけてくるかがわかり、自分の経験がどの程度評価されるのかの目安になります。
転職活動は、在職中に進めるのが基本です。収入が途切れない状態で進めれば、焦って条件の合わない会社を選ぶことを防げます。
30代後半の転職で使いたいサービス
同じ職種か近い職種から応募先を選ぶ
応募先は、今と同じ職種か、近い職種から選ぶのが基本です。経験をそのまま活かせるので、即戦力としての期待値を伝えやすく、年収も維持しやすくなります。
業界を変える場合も、職種を変えなければ経験を活かせることは少なくありません。たとえば、営業職のまま別の業界に移る、経理職のまま別の業界の会社に移るといった形です。
未経験に挑むなら経験を持ち込める分野を選ぶ
30代後半でまったく未経験の仕事に移るのは、不可能ではありませんが、20代よりも難しくなります。それでも挑戦したい場合は、これまでの経験を少しでも持ち込める分野を選びましょう。
たとえば、営業の経験を活かして同じ業界の企画職に移る、現場の経験を活かしてその業界向けのサービスの仕事に移る、といった形です。「経験はないが、この部分は前職の経験が活きる」と説明できれば、育成のコストがかかる人という評価を避けやすくなります。
面接では入社後の役割を具体的に答える
面接では、「採用してください」とお願いする姿勢ではなく、入社後に何に取り組むかを具体的に伝えることが大切です。
私自身、30歳でベンチャー企業に転職しました。今振り返ると、採用されたのは、採用側が求める基準を上回る経験を示せたこと、質問にスムーズに答えられたこと、そして落ち着いて余裕を持って面接に臨めたことが大きかったと感じています。入社後に何に取り組むかを伝えていたので、採用する側も入社後の姿をイメージしやすかったのだと思います。
30代後半の面接でも同じです。棚卸しした経験をもとに、「入社したらこの役割で、この課題にこう取り組む」と具体的に答えられれば、即戦力としての期待値は大きく上がります。転職理由の伝え方は「転職理由の伝え方」で詳しく解説しています。
- 経験を数字と「どうやって成果を出したか」で棚卸しする
- 応募前にスカウトで市場価値を確かめる
- 同じ職種か近い職種から応募先を選ぶ
- 面接では入社後に何に取り組むかを具体的に答える
30代後半の転職で気をつけること
最後に、30代後半の転職で起こりやすいことを、活動中から入社後まで順番に確認しておきましょう。
転職活動が長引きやすい
30代後半の転職は、求められる経験と役割が具体的な分、条件が合う求人が見つかるまでに時間がかかることがあります。数か月かかることも想定し、在職中に余裕を持って進めましょう。
年収が一時的に下がることがある
前に紹介したデータのとおり、35〜39歳で転職した人の多くは賃金が増えていますが、4人に1人ほどは減っています。特に、職種を変える場合や、管理職から一般職に移る場合は、入社時の年収が下がることがあります。
入社時の年収だけでなく、その会社で数年後にどこまで上がるかも合わせて確認しましょう。給料を軸にした判断の方法は「給料が安くて辞めたい時の判断基準」でも解説しています。
年下の上司のもとで働くこともある
30代後半で転職すると、年下の上司のもとで働くことも珍しくありません。前の会社での立場ややり方にこだわると、新しい職場になじみにくくなります。
採用側が「価値観が固まっていないか」を見ているのは、まさにこの点です。入社後は、年齢に関係なく新しい職場のやり方をまず受け入れる姿勢を持っておきましょう。入社後に「こんなはずじゃなかった」と感じたときは「転職して後悔したらどうする?」も参考にしてください。
- 転職活動は数か月かかることもあるので、在職中に余裕を持って進める
- 職種を変える場合や管理職から一般職に移る場合は、年収が下がることがある
- 年下の上司のもとで働くこともあるので、新しい職場のやり方をまず受け入れる
よくある質問
35歳を過ぎたら未経験の仕事には移れませんか?
移れないわけではありませんが、20代より難しくなります。未経験者を育てる前提の求人は、35歳未満を対象にしやすい仕組みがあるためです。未経験に挑むなら、これまでの経験を少しでも持ち込める分野を選び、「この部分は前職の経験が活きる」と説明できるようにしておきましょう。
40歳になる前に転職したほうがいいですか?
年齢だけで急ぐ必要はありません。40代でも、経験を活かせる転職であれば十分に可能です。大切なのは、今の会社で5年後の自分に納得できるか、即戦力として期待される経験があるかを確かめたうえで判断することです。40代の判断については「40代で仕事を辞めたいと悩んだ時にすべきこと」も参考にしてください。40代の転職が厳しいと言われる理由と、決まる人の動き方は40代の転職が厳しい理由|元面接官が教える採用される人の共通点で解説しています。
30代後半の転職で年収は下がりますか?
必ず下がるわけではありません。令和6年の雇用動向調査では、35〜39歳で転職した人の45.5%が前の会社より賃金が増えています。経験を活かせる同じ職種や近い職種への転職であれば、年収を維持したり上げたりしやすくなります。
まとめ
30代後半の転職は厳しくはありませんが、20代と同じ動き方では通りません。採用側が見ているのは、年齢ではなく即戦力としての期待値です。
- 35歳の壁の正体は、未経験者を育てる求人が35歳未満を対象にしやすいこと
- 採用側は、任せる役割、業界の理解、強みの再現性で即戦力としての期待値を判断している
- 戦力になるまで時間と手間がかかると思われると見送られる
- 経験を数字と再現性で棚卸しし、市場価値を確かめてから、経験を活かせる転職先を選ぶ
- 面接では、入社後に何に取り組むかを具体的に伝える
まずは今日、これまでの経験と成果を書き出し、「どうやってその成果を出したか」まで言葉にしてみてください。それが、30代後半の転職で評価される一番の準備になります。



